アメリカ最古の時計メーカーは建国僅か36年後の創立!老舗メーカーの全貌を探ろう

2019年12月29日

時計製造の歴史はフランスやイギリスで15世紀とかまで遡ることは出来ます。まだ時計メーカーなんて存在しない時代。しかも個人がそれぞれ時計を使用する時代ではなく全ての時計は公共の場で共有するものでした。

作られた時計は個人時計士による製造物であり、時計史にその個人名は残っていても作られた時計は一般庶民にとって身近なものではありません。博物館や歴史的建造には存在しますが、気軽に触れるようなものではないのです。

そうした点も踏まえて、ここではあえて、量産時計を作ることを生業にした会社が生まれた頃の話で、圧倒的な製造数を誇る19世紀アメリカに対象を絞り、最古の時計メーカーについてお話ししたいと思います。この時代はドイツの時計産業も盛んであり世界の需要に対し両国が中心となり輸出を頑張ってきたのですが、機械化による一貫生産においてはアメリカが一歩先を歩んでおりました。

その時計産業が盛んな頃から近代まで作られた時計が現存し、未だ健在で動作し活躍している条件でアメリカ最古の時計メーカーと言えば「セス・トーマス」が該当すると思われます。

最古っていつ頃?

アメリカ最古の時計メーカー「セス・トーマス」の創業は1812年であり19世紀初頭です。アメリカ七大メーカーのうち、「セス・トーマス」を除けば他は19世紀半ば以降の創業ですから、草分け的存在といえましょう。

「セス・トーマス」の時計産業としての功績は偉大であったゆえに、その功績を讃え、工場の存在する町の名前さえメーカー名由来に変えてしまったくらいですから凄い会社ですよね(プリマスハローからトーマストンに変更)。

「セス・トーマス」の創業からの歴史の古さと操業規模の大きさは、生産量と輸出量の多さにも比例し、当時世界中に拡販されたものと推察します。

日本で一番古いセス・トーマス

アメリカの古時計は、日本には明治維新以降横浜港を経由し僅かながら輸入され、公共の場を中心に設置されましたが、輸入されたセス・トーマスの時計の中には明治維新以降のものとは限らない時代のものが存在すると、とある民家の掛け時計を調査したことで分り筆者を含め時計ファンはびっくり仰天しました。

なぜなら、西洋時計が輸入され使用されるきっかけは明治維新による定時法( 明治6年から日本では一日の時間の長さを等分する方法を採用した)の導入からであり、それ以前で用いた不定時法(季節によって異なる日の出日の入りに合わせて行う時間表現)の時代では西洋時計は必要としなかったからです。

明治時代ではないセス・トーマスが存在した根拠が何かと言えば、文字盤を外した内部に真鍮製の機械があり、歯車受けに打刻された文字には、前述のプリマスハローの文字が存在するものがあったのです。

この文字が存在する時計は時代的には日本の幕末の頃に作られたものだったと推察出来ます。1812年の創業で1853~1865年までの間、セス・トーマスの所在地はプリマスハローの地名でした。日本では1867年が江戸幕府の終焉、大政奉還の年ですから、その2年前までプリマスハローの地名であったわけです。

ちなみに1865年はアメリカ南北戦争勃発の年にあたります。日米ともに激動の時代を迎えた頃作られた時計ということになりますね。アメリカ最古の歴史を持つメーカーならではの逸話ではないでしょうか。

どうして日本に最古の頃のセス・トーマスが存在するのか想像力をたくましくして筆者は推論を確立しました。つまり、アメリカでもてはやされ、やがて流行遅れになった時計は日本にお下がりとして輸出され、本国アメリカでは最新の時計にすり替わっていった。そのお下がりの中に、時代の古い(日本の幕末期に該当する)時計が混じりこんでいた結果なのだと筆者は推察しますが、皆さんのご意見はいかがでしょうか?

話は戻りますが、ほかのアメリカのメーカーのものでは、2番目に古い歴史を持つニューヘヴン(1853年創業)がかろうじて江戸期に該当するものがあるかもしれませんが、他のメーカーでは古くても明治初期に該当する時計がせいぜいで、さすがにこれらメーカーの江戸時代の時計を見かけた情報は筆者はありません。

(セス・トーマスは1812年の創業なので日本の江戸後期にあたる。ニューヘブンはそれより41年もあとの1853年日本の幕末期の創業なので、創業~明治維新まではわずか14年しか江戸期には該当しない。その期間に作られた時計で日本に輸入されたニューヘヴン時計はいまのところ発見されていない)

ちなみにアメリカの代表的な古時計ブランドを列記すると、アンソニア、ニューヘヴン、ウェルチ、ウオーターベリー、イングラハム、ギルバートがセス・トーマスを含む7大メーカー。

江戸時代の時計となればもはや古典資料の部類といってもいいくらい機械時計の世界では古いものと思われます。最古のアメリカ時計ゆえの歴史ロマンと言いましょうか、ため息が出ますね。

筆者が集めたセス・トーマス

筆者はアメリカ最古のメーカーであるセス・トーマスの時計が好きで(むしろ古すぎるその歴史に思いを馳せるのが好きで)3機ほど探し出してコレクションしました。下記画像はそのうちのひとつで、時計の入手先は、筆者の地元であります静岡市の護国神社蚤の市です。状態が良く、価格的に手がでないかなと思いましたが3万円という破格の値段で譲ってもらいました。2017年の春だったと記憶します。

2017年に蚤の市にて破格の安さで手に入れた。全てがオリジナルのコンディションのものはとても少なく、アンティークショップでは高値となる。

振り子室の扉は、一般的には左に取っ手がありますが、この時計は下側中央にあります。左右対象にこだわる意匠でしょうか、見ていてバランスがよく安定感が一層美しさを際立たせています。

文字盤の長針短針、及び文字の種類は典型的なローマンであり、シンプルで清楚な印象です。社名のゴシック調文字は、この時代の特有の文字であり1880年代になると普通のアルファベット SETH THOMASに変わってしまいます。ですので、希少かつ古式ゆかしい美意識がこの時計にはあります。

古時計は製造より150年も経過すると大抵文字盤は劣化し交換さますが、これはオリジナルのまま残された貴重品です。筆者の前の持ち主はお医者様で代々受け継がれたワンオーナーものと云われており、清潔な室内で大事に保管されてきたゆえの状態の良さでありましょう。

画像上部中央には四角を丸で囲んだ図形の中にS.Tの頭文字がゴシック調に入っている。文字盤下側の社名もゴシック文字が美しい。

「セス・トーマス」の古時計を入手する都度、どきどきしながら文字盤のねじを外して機械を確認してみますが一度もプリマスハローの打刻にはお目にかかったことがありません。

しかし、「セス・トーマス」の機械に組み込まれた大きな歯車を見るたび、近代の時計にはない手作りに近い機械の味わいの感動、時間の経過が緩やかだった時代背景など、漠然とした感覚でありながらもロマンを感じとることが出来るのです。アメリカ最古の時計メーカーであるゆえのどきどき感が味わえるのです。

だから筆者はこれからもセス・トーマスは見つけたら(お小遣いの許す範囲で)買ってしまうに違いないでしょう。

筆者も欲しいセス・トーマス有名モデル

時計メーカー「セス・トーマス」では別名、オフィス3兄弟と言われる、OFFICENo,1~No,3までの三つのモデルが同社で有名なコレクターズアイテムといわれ、筆者はカタログでしか見たことがありません。当然、画像も用意できませんが悪しからず。

しかし、ユニークで愛嬌のある外観(ピーナッツの殻を逆さまにしたような外観)は筆者ならずとも手に入れたいと思う人は多いと思われます。こうしたモデル名が付いたヤクモノ時計(通称など含め時計モデルの名前をいえばコレクターに通じる有名品)の多さは、アメリカ最古の時計製造の歴史と比例するものがあります。

まとめ

アメリカ最古の時計メーカー「セス・トーマス」の歴史、生産数、功績で右にでるメーカーはありません。セス・トーマスがアメリカNo,1に間違いないと筆者は独断で評価しちゃいます。ごめんなさい。

日本で最古のセス・トーマスは江戸時代のものが現存するとのことで、歴史のロマンを感じますね。

しかしながら、江戸時代を示す刻印のある時計には筆者もお目にかかってはいません。稀有なのです。

コレクターズアイテムのオフィス3兄弟を見つけたら即GETですぞ。でも、紹介した以外のセス・トーマスでも歴史的味わいの深い時計はいくらでも存在します。是非、あなただけの「セス・トーマス」を見つけアメリカ最古の時計メーカーのテイストを存分に味わって下さいね。