ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)決勝戦 で勝利し、バンタム級の頂点に立った井上尚弥は歴代ボクサーの中でどれほどの強さを持つ位置づけなのか専門家の評価をまとめてみた。そして近年ツーブロック(部分刈上げ)の髪型に整えることはどんな意味を持つのか、ボクサーの心理を読み取って推察してみた。
決勝戦までの歩み
WBSS世界バンタム級頂上決戦を制するまでの、井上尚弥が築き上げてきたヴィクトリーロードを振り返ってみよう。
井上尚弥選手が世界で”Monster”として強さを認知され始めたのはスーパーフライ級のタイトルマッチでオマール・ナルバエス選手と戦った時である。
オマール・ナルバエスは当時WBO世界フライ級王座を16回防衛、WBO世界スーパーフライ級王座を11回防衛している最強と言われたボクサーだが、 井上尚弥選手はわずか2RでKO勝ちしてしまった。
バンタム級に変更後もチャンピオンのマクドネル選手を1RでKO勝利を果たし、 晴れて日本人最速の3階級制覇を達成し強さを見せつけた井上尚弥。歴代の日本人ボクサーでは異例の瞬殺力だ。
晴れてパウンド・フォー・パウンド(格闘技の世界全般を対象にしで、仮に体重差がない場合に最強と目されるチャンピオン達のランキングを指す。PFPはその略称)の仲間入りを果たし5位に位置付けた。
ここまで、井上尚弥の髪型はオールバック風、短髪風とバリエーションはいくつかあったが、ツーブロック(部分刈上げ)は共通していたようだ。理由はあるのだろうか。これについては後ほど仮説を立ててみよう。
そして、世界バンタム級最強チャンピオンを決定する WBSS世界バンタム級頂上決戦 では、決勝までの戦いを僅か2ラウンドまでですべて片付けてしまう。しかも無傷で!
そうして迎えた2019年11月7日さいたまスーパーアリーナでの決勝戦。
相手はフィリピンの英雄ノニト・ドネア。5階級制覇のレジェントチャンピオンであり、井上尚弥自身も尊敬する選手である。試合中、井上は初めて右目瞼をカットするダメージを受けたが、11ラウンドでとうとうドネアからダウンを奪う。最終12ラウンドまでもつれ込んだが、判定は3-0で井上が勝利した。
これにより、名実ともにキングオブバンタムとなりゆるぎない強さを証明した井上尚弥。 パウンド・フォー・パウンドも更に上位ランキングを果たし4位となった。これほどのスピード出世は歴代有名ボクサーでもそうそうは存在しない。そしてこの後、舞台をアメリカに移しタイトルの挑戦を受けることとなる。
世界の評価
2019年アメリカ専門誌「リング」で井上尚弥は パウンド・フォー・パウンド 4位の評価となったが、イギリス専門誌は3位以下ではない、むしろ1位も時間の問題だとしており評価は分かれるところ。
しかし、アメリカもイギリスも共通して言えるのは、今後更に評価は上がり1位の評価を得る可能性は非常に高いというところで意見が一致していることだ。それほどの評価を得ることが出来たのは、下馬評通りにバンタム級統一戦でバッタバッタと相手を瞬殺し優勝したことに対し、記者たちの確信が現実となったことが要因だろう。
では日本国内歴代のボクサーの中で井上尚弥の強さの位置付けはどうだろうか。
元WBA世界ライトフライ級王者にして13回連続防衛記録を持つ具志堅用高が今までの最強ボクサーとして異論はないだろう。この具志堅と比較検証すると面白い結果が出てくる。
具志堅は攻撃タイプであるが防御も上手い。もちろん体幹もしっかりしていて軸がぶれない。動体視力もずば抜けておりパンチも早い。総合評価ではバランス良く全てが高評価であるゆえに国内最高防衛記録を達成出来たといえる。
一方、井上尚弥はどうだろうか。こちらも攻撃タイプであり防御も上手い。具志堅との共通点は非常に多いが、破壊力を見るとやや井上が勝るように感じる。具志堅も凄い攻撃力で相手を倒すが、井上は一撃必殺で相手をマットに沈める。それはガードの上からでも相手を倒せるほどの破壊力を持つ。
さすがに5階級制覇レジェンドのノニト・ドネア戦では瞬殺とはいかなかったが、11ラウンドのボディーブロー炸裂でダウンしたことのないドネアがうずくまるシーンは圧巻だった。
今後さらに凄い戦いを井上は見せてくれるだろうが、現時点の評価だけでもパウンド・フォー・パウンド的には強さで日本国内ボクサーの歴代トップといって良いだろう。
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ちなみにドネア戦では井上の髪型は七三分けヘアーですそがツーブロックだった。意味深なヘアスタイル。わけが有りそうだ。
髪型への意識
一説には、井上尚弥は美意識が非常に高い人でスタイリストとの綿密な打ち合わせによって髪型を決めているとの情報がある。しかし、美意識だけでツーブロック(部分刈上げ)にするだろうか?
ツーブロックは女性には受けが悪い。井上尚弥ほどの二枚目なら女性の目を意識して女性ファンの嫌がる髪型にはあえてしたくないと考えるのが普通だ。しかし、彼はツーブロックを止めない。
井上尚弥は円満な家庭を持っている。だから女性ファンの目を気にする必要はない?いやいやそんなはずはないだろう。彼は、井上尚弥はもはやスターなのだ。実力もルックスも申し分ない。大昔ならブロマイドだって飛ぶように売れただろう。テレビ中継で井上尚弥を見ている女性ファンが映し出されていたが、皆うっとりした眼差しで彼を見ているじゃないか。
ツーブロックヘアーには何かわけがあるとにらんだ。そこである仮説を立ててみた。
井上尚弥はビッグマウスではない。試合前に間違いなく楽勝だなんて一言もいったことはない。彼は謙虚なのだ。そして冷静なのだ。そんな男がどんなに強くても試合前の調整を綿密に行うことは当たり前。それでも最後の締めくくりに神頼みのジンクスがあってもおかしくないだろう。
今までオールバック風、七三分け風と色々髪をいじくってきたが刈上げのポイントは外していない。耳にかかる部分から下は刈上げなのだ。何故なのか?一説には、髪には煩悩が宿るのでお坊さんは丸刈りにするのだそうだ。ボクサーは減量のとき、水が飲めない。水が欲しい気持ちを少しでも絶ちたい。
そんな思いから、髪を短く刈り上げて気持ちを楽にしたい。そして自分に勝利の神が降りてくるのを感じたい。だからジンクスとして常に刈上げ状態は保っておきたいのではないだろうか。
但し、丸刈りにするのはスタイリストが許さない。じゃあどうする?ボクサーの命である三半規管を研ぎ澄まし神が降りてくることを祈るのには耳から下の刈上げは譲れない。井上本人とスタイリスト双方が歩み寄って選んだ髪型がツーブロックなのだ(と大胆な仮説を立ててみた)。
皆さんはどう思われるだろうか?勝負の世界に生きる人間の心理はなかなか理解しがたい。歴代トップの強さであろうとも、ときには試合を避けたくなることもあるだろう。そんな時、己を鼓舞して神に祈りを捧げ戦いに挑む。勝たせてくれたなら再び刈上げをすると約束して合掌する。そんなイメージを走らせてみた。全く根拠なんてないのだが。
まとめ
世界で数あるバンタム級チャンピオンの中で頂点を決める戦いを征した井上尚弥の強さは、歴代のチャンピオン達と比較してもトップクラスの実力を伴うと、各国の記者たちの評価でも一致するところである。
強さの秘密は何といっても破壊力。相手のガードの上からでも倒すことが出来るほどの強さを持つ。
しかし、これまで一貫して取り入れてきた髪型がツーブロック(部分刈上げ)でありこまめな美容院通いをすることでも知られている。その訳について仮説を立ててみた。
長い髪は煩悩が宿る。試合前の煩悩に打ち勝つ意味で髪を刈り上げている。
勝利の神に誓いをたてている。勝ったらまた刈上げにします。勝たせてくださいと。
スタイリストに反対されて丸刈りにはしていない。井上とスタイリストの双方が歩み寄りで決めた髪型が七三分けのツーブロックなのだ。
以上は仮説でなにら根拠はない。しかし勝負に生きるアスリートだ。己の強さだけに頼って生きられるほど人は強くはない。歴代のボクサーだってみなジンクスは担いできた。井上尚弥だって例外ではないのだ。